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人物が振り向く。
やめて。顔を見せないで。
微かな希望を捨てないで。
「冷夜…………?」
兄が訝しげに呟き。
嗤った。
☆
気付いたのは、父に全てを教えて貰った時。
体術に、螢燈術、(壜により妖を操る術)陰陽術。
合格だ、と笑う父に僕は訊いた。
『父さん、螢燈術使えないよね?』
父は目を見張って、真剣に頷く。
『あぁ。羽旭に俺は婿入りしたんだ』
やはり。
僕は手の中にある壜を軽く睨む。
父さん、と僕は声を発した。
父が穏やかな眼差しを送ってきた。
『僕は、螢燈術が使えない』
父の息を呑む音が聞こえた。
軽く嘆息した父は呟いた。
『――あぁ、俺の血筋か……』
父によると、《父の一族》は螢燈達と揉めていた。
戦争の最中に父は母を見つけて連れて帰り、そして。
ロマンチックだよな、と父が笑った。
いつしか、好きになっていたのだそうだ。
それから色々あって母と結ばれて僕が腹に宿った。
螢燈は勿論反対した。敵が増える。しかも我が一族の血を引いた。
『その時羽旭は何て言ったと思う?』
父がさも可笑しそうに笑い転げてみせた。
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