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―――……それまで、刹那の幸せを噛み締める事だ……―――――
気味の悪い嘲笑が鼓膜を震わせた。
前が暗くなり、僕は生に執着しているのだ、と思い当たる。
父に震える声で訊かれた。
『今、何歳だ?』
もう、時間がないじゃないか。
何故僕がたまたまこの二人の間に産まれただけで死なないといけないのか。
何より、何故二人が哀しむ結末しかないんだ。
『十歳―――――』
寿命は、後十年。
父との会話が終わった後、僕は首元の壜を取り出した。
『螢燈』が何だと云うのか。
罪の血筋だろうが紛れもなく、僕は人だ。
あらん限りの力を入れて握る。びきり、と壜に亀裂が入った。
封印である壜に亀裂が入ると妖は消滅する。
僕の守護妖は命令以外では出ないように徹底していたから、出てくる訳ない。
バリンッ!
壜が粉々に割れた。
指がガラスで切れた。
僕は、ただ、嗤っていた。
ざまあみろ。
二十歳に死んでやるものか。
螢燈の全てを壊してやる。
小さな、甘い匂いの妹を守らなくては。
あの幼子も血を引いている。
壊して、壊して、壊して、―――螢燈の前を暗くしてやる。
儚い妖の命が消えた。
始まりの死。
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