神威の嘆きは伝わるか、伝わらないか

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ため息をついて髪を掻きあげた。 ふつり、と羽旭が黙っていて耳鳴りがする程の沈黙だった。 「お母さん」 冷夜が呼び掛けると掠れた声で羽旭が応える。 「ん」 冷夜は静の壜を弄りながら唇を尖らせた。 「意味わからない、この状況」 二人は何故か鉄格子の内側で向かい合って座っている。 気分は囚人だ。 羽旭は何時もの陽気が抜けてぼぅっ、としているし静は出てこない。 「箜が襲撃してきた」 乾いた声で告げられた内容に冷夜はがばっ、と立ち上がる。 「箜兄が!?」 まぁ取り敢えず座んなさい、と言われて渋々座る。 先程、急にセブン・イーターと名乗る女に連行されてここまで来たのだ。なるほど、箜兄が来たからか。 螢燈達に箜兄を憎んでいてやり直させる、と宣言したばかりだ。思ってもみないチャンス。 「冷夜。セブン・イーターは知ってるよね」 羽旭の問いに素直に頷く。 セブン・イーター『七の喰らう者』(ななのくらうもの)は総領の直接部下で皆忠誠を誓っている。 螢燈として屈指の者達の集まりだ。 ここに連行したのもセブン・イーターと名乗っていた。 「さっきのは誰?」 羽旭は分かりやすいいやぁな顔をした。 問うた冷夜は吹き出す。何て顔だ。
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