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「しかも一つ一つが妖刀、神剣の類(たぐい)だから水襲ってきたり雷落ちたり」
冷夜が面倒な相手だ、と嘆く。
羽旭が笑みを深くした。
「でも行くんだろう?」
冷夜は羽旭を見た。
いつものがさつで優しい母の顔だ。
もしかしたら冷夜は死ぬかもしれないのに。
いつも小さい頃から背中を押してくれる。
――……冷夜。どれを操る?……――
光を放つ壜を背にした羽旭が小さい冷夜の顔を覗き込む。
羽旭の頬は薄い群青に染まり、髪は透き通る橙に照らされていた。
冷夜は壜の光に息を呑んで圧倒され、そして夢見心地で言った。
『ぜんぶ』
羽旭がはぃいっ、とすっとんきょうな声をあげた。
――……はぁ、全部!?……――
冷夜が頷き薄緑色の壜を取った。
封じられたばかりの「白」の壜である。
『これも、』
ピンクの煌めきの「花」の壜。
『これも、』
真っ黒な煌めきの「夜」の壜。
『これも、』
そして冷夜は最後にとある壜をぷくぷくの指で掴んだ。
『これもっ』
緑色の「静」の壜。
冷夜はきらきら、と瞳を輝かせて両手一杯の壜を羽旭に見せた。
『ぜーんぶっ』
全部やるよ。
だってやらなくちゃ、分からないでしょ?
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