神威の嘆きは伝わるか、伝わらないか

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見事脱走した冷夜は音を立てないように早歩きに切り替えた。 きょろきょろ辺りを見渡す。 「真白さんいないよね」 安心すると同時に。 一本の投剣(とうけん、投げるのに適した剣)が冷夜を目掛けて放たれた。 「…………っ」 腰を沈めてかわす。 すると自分の立っている地面から数十本の剣が飛び出した。 「なっ………!」 ジャンプして剣達から距離をとる。 冷夜は後ろを振り向いた。 「剣コレクターめっ」 数本剣を手にした真白がこめかみに青筋をたてた。 「なにそれ。何か嫌だ」 事実だしっ、と冷夜が静の壜(びん)に触った(さわった)。 そのままコルクを抜いて…………抜けない。 「えっ?静、出てきて」 静は沈黙したままだ。 真白がからから、と笑う。 「壜の操作は全て総領様が行っているのよ?」 そうだった。セブン・イーター相手なら壜は使えなくて当然だ。 何故なら総領の手足代わりがセブン・イーターの存在意義なのだから。 剣は使えないし、持ってない。 他の武器も扱った事がなく無理だ。 真白が近づく。 「早速、チェック・メイト?つまらないわ」 さあ、どうする。 数分悩んだ冷夜は目を瞑る。 そして真横に跳んだ。 なるように、なれ!
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