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すると―――、がっしりした温もりが冷夜を抱き留めた。
冷夜が恐る恐る瞳を開けた。
輝く黒の対の瞳が焦点を結んだ。
「………――――ぁ」
朧気(おぼろげ)な意識の冷夜が囁いた。
真白が数十本の剣を投げた。
冷夜を片手で抱える人影はぱちり、と指を鳴らした。
びきびき、と地割れが起こり金の閃光が空へ放電した。
それは二人の壁となり、剣を叩き落とした。
剣の切っ先が冷夜の額を少し切り裂く。
段々意識がはっきりしてくる。
唇を噛んだ真白が呟いた。
「破魔……!」
翠の瞳が冷夜を覗き込んで、笑った。
冷夜は緊張で悴む(かじかむ)指で袖を掴む。
額から出る血を拭う指が懐かしい。
眉を潜めた真白はコートをばさり、と叩いた。
飛び出した剣を難なく掴み真白は正面で微笑む人影を睨む。
「日向、箜!」
羽根を羽ばたかせてシルヴィアが降り立つ。
冷夜を抱き締めていた箜が冷夜を初めて見てにやっ、と笑む。
「冷夜。久し振りだね」
シルヴィアが小さく、呟いた。
「あれが、レイヤ……」
冷夜が泣きそうな声をあげた。
「箜兄っ…………!」
今までずっと、会いたかった。
憎しみも悲しみも愛しさも全て、ひっくるめて。
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