神託を卸すべき神はいるのか、いないか

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シルヴィアが霊力の羽根を解除した。 真白が同じく剣を仕舞った。 箜の胸から冷夜が離れる。 「箜兄、何でいるの」 冷夜の低い声に箜が悪びれもなく声を立てて笑った。 「冷夜を連れて行こうって思って。………羽旭母さんは別だけど」 「――――大嫌い」 俯く(うつむく)冷夜が呟いた。 冷夜以外の者が絶句した。 「大嫌い大嫌い大嫌いっ!何でおばさん二人を殺したの、何でお祖父ちゃんも殺したの、どうしてっ………!」 叫ぶ内に泪がどんどん溢れてきて、嗚咽(おえつ)ばかりが漏れた。 「『冷たい夜』で生き残ったのは、私とお母さんと、お父さんだけじゃないっ………!」 箜が目を見張る。 「遙斗父さんは生き残ってないよ」 シルヴィアが顔をそむけた。 その頭を撫でてやりながら箜は冷夜を見た。 愕然(がくぜん)とした面持ちに箜は内心舌打ちをした。 まさか喋ってないとはな。 自分のお陰で冷夜の精神が崩れたのを知っていた。 だからそう簡単に羽旭が話さないとは思っていたが。まさか、五年経った今でも。 箜は確かめるように、出来るだけ冷夜を傷つけないように言った。 しかしその言葉は冷夜の心を砕いたのだ。 「父さんは母さんを生かす為に死んだ」 ☆
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