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段々と先から冷たくなっていく遙斗には、彼女の体温が堪らなく愛しく感じた。
「死んじゃ、やだよ……―――」
うわぁあ、と泣き始めた羽旭に微笑む。
ほら、夢の通りじゃないか。
泣くなよ。あの日から、強がりと泣き顔だけは耐えられないんだ。
どうしようもなく、抱き締めたくなる。
するり、と冷たい指先がすり抜けた。
倒れた遙斗の顔を確かめるように撫でていた羽旭は、ある方向を睨む。
「…………まだ、追いかけるのね」
箜が父に似た顔で、静かに嗤う(わらう)。
へたりこんでいた羽旭はうつむいた。
長い髪が遙斗の顎に落ちた。
「――殺した理由は分からない」
短刀を掴んでいた箜が瞳を瞬きさせた。
「けど、ね」
生来の慎重さを出した箜が構えた。
「……………何」
怖い程の冷静を保っている羽旭が泪に濡れた瞳を箜に向けた。
「私は仇を討てるようになったの。――……遙斗のお陰で、ね」
羽旭の身体から橙色の炎が迸った(ほとばしった)。
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