神託を卸すべき神はいるのか、いないか

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「お父さんが、死んでた…?」 未だに信じられない様子の冷夜に箜が一歩近付いた。 「死んだ理由は母さんに生きて欲しいから。破魔一族の子を宿しただけの母さんが死ぬ理由は、」 一息ついてから、箜は冷たい瞳で冷夜を見下ろす。 「螢燈が目先の復讐に先走り、里人を顧みず、(かえりみず)邪魔なだけの破魔を滅亡させた。……それだよ、冷夜」 破魔、螢燈の血を受け継ぐ少女に兄は抑揚に欠けた口調で言った。 「冷夜はそれでも螢燈に居座るのかい?」 冷夜は唇を噛んだ。 あぁ、そうだ。私は曖昧な存在だ。 守護妖までいるのに里人に認められず、破魔に抵抗がある。 羽旭が呟いていた。 ――……ふざけるな。 ふざけているのは自分の方だ。 箜のように決められず、遙斗のように両方取れない。 だけど。 白に彩、夜、静といった傍観を決め込む絶対の中立者がいる。 彼らは傍観、と本人達がいっても味方としか思えない行動をとってくれる。 里人も、自分が近付かなかっただけだ。 『あなたを憎んでいたの。……ごめんなさい』 会った瞬間に号泣し、謝った人が何人もいた。 私は独りじゃない。 独りぼっちでいられない。 「箜兄は勘違いしてる」
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