神託を卸すべき神はいるのか、いないか

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冷夜のいきなりの宣言に箜が虚をつかれ、目を見張る。 「………冷夜?」 母に似た冷夜の性格が素に出た。 凛と見上げて睨み付ける様は箜を驚かす。 「私は、破魔であって破魔じゃない。螢燈であって螢燈じゃない。でも、それで良いと思ってる」 遙斗の選択の『上』をいく。 だって、そうしないと、勝てないから。 冷夜が、髪を靡かせ生真面目そうに箜を見詰めた。 ――負けられない。 「それがだめなら、普通の人に戻ってやる。こんな馬鹿馬鹿しいの飽きたわ。だから」 シルヴィアが微か、微笑む。 予想通り、素晴らしく突き抜けた考えね。 生きていたら遙斗もこう言っただろうか。 冷夜と遙斗が重なって見えた。 「私は破魔に行かない。――断る!」 箜が空を仰いだ。 「まるで父さんじゃないか。遺伝してる」 シルヴィアが冷夜を見詰めた。 視線に気付き、冷夜もシルヴィアを見る。 「あなたに印をつけておきましょうか」 箜が意外そうな目付きでシルヴィアを見た。 「唐突な」 シルヴィアが風を切るように近づき。 冷夜の首筋を引っ掻いた。 「いっ……」 目を瞑る冷夜の首筋から血が流れた。 シルヴィアの指から文字が溢れ、冷夜に入り込む。
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