神託を卸すべき神はいるのか、いないか

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「なっ………つあっ」 痺れるような痛みに顔をしかめる。 シルヴィアは満足そうに頷くと、箜を一瞥(いちべつ)した。 「行くか」 「えぇ。妹様の意思は変わらなそうですし」 「…………冷夜な」 「妹様で合っています」 いつものやり取りを交わした二人を痛みに意識が遠退く(とおのく)冷夜が睨む。 視界がぼやけてぶれている。 「何して………っ」 シルヴィアは澄ました顔で答えた。 「言ったでしょう。『印』です」 シルヴィアが羽根を生み出した。 その羽根は集まって純白の大鷲(おおわし)を形作る。 箜が軽く翼を叩き、飛び乗る。 シルヴィアがふわり、と純白の大鷲の背に降り立った。 「痛みは消えます。しかし、あなたは痛みを忘れる事が出来なくなります」 全くの無表情でシルヴィアが言った。 目眩(めまい)に膝をつく冷夜。 「印はあなたを侵食するのです」 そう言い置いてシルヴィアは大鷲を操る。 大鷲が飛び立った。 痛みに混濁(こんだく)する意識が、一人の螢燈の台詞を捉えた。 「牢屋にいた羽旭さんが、惨殺死体で発見されましたっ!破魔の残党の仕業かと…………」 聴いた事のある鈴の音。 リィン、リィィン。 はるか、遠くに―――――― ☆
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