48人が本棚に入れています
本棚に追加
包帯をまく。
こんな時、腹の立つ笑い方をしながら包帯をまいてくれる母はいない。
傍らに白(しら)が哀しそうに立っている。
夜が机に座って空を眺めている。
うとうとしている静が机で丸まっている。
彼らは自分の意志で顕現(けんげん)している。
やっぱり優しい、と冷夜は思う。
「夜。机に座っては」
白がいつものように叱る。
「机は人に使われるが為にあるんだよ」
私達は人じゃないが、と心中静が突っ込む。
冷夜も苦笑している。
むっ、と眉を寄せた白が怒る。
「………だめでしょう」
夜が慣れた口調で言い返す。
「いいんだ」
真っ白な瞳と髪、純白の着物に薄青の簪を付ける数少ない女性、白は二十代前半でまぁ綺麗な妖だ。
本性は九つの尾を持つ純白の狐だ。
非があるのに、いけしゃあしゃあと言う夜は黒髪に黒の瞳、じゃらじゃら、と音を立てる宝石を巻き付けている。
黒のセーターにスラックス、宝石を飾っている漆黒のマント。怪盗みたいだ、と冷夜は思う。
本性は鋭い目付きの黒豹(くろひょう)だ。
そういえば、冷夜は静の本性をまだ見た事がないのだ。
無意識の内に、冷夜は現実から目を逸らしている。
怖い、もう私は孤児(みなしご)だ。
最初のコメントを投稿しよう!