神の導を示す者はいるのか、いないか

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守ってくれる人もいない。 破魔の方がよっぽど気が楽になれただろうに。 自分は、間違った選択をしたのだろうか。 どんどん、暗い考えになる冷夜を見ていられない白が声をかけようとする。 その時。 夜が盛大なため息をついた。 白がほっとしたように笑う。 静が嫌そうに耳を動かした。 冷夜は突然のノック音に瞬きした。 「はい、どちら様……」 ベッドから出て応対しようとする冷夜を客はドア越しに拒絶する。 「あー!いいっ。ベッドに入ってなさい」 必死な声に思わず従う冷夜。 ドアが開いた。 冷夜があんぐりと口を開けた。 「颯(そう)、さん」 軽やかな足取りで現れた颯――神林 颯に冷夜は叫ぶ。 「何でここに!」 颯がしれっと答えた。 「静が」 静を睨む冷夜。無論、寝たふりを続行する静。 颯は総領の傍流で姉が総領の妻である。 そして、冷夜の婚約者である。 冷夜が幼い頃に出来るだけ破魔の血を薄くしたい螢燈が決めたもので、箜は大反対した。 しかも、颯は箜と同い年でクラスメイトという偶然だ。 箜はライバル視しているが冷夜にとっては兄貴分で今もそう思う。 颯は男として見てもらえるまで待つ、と宣言したので大人しく待っているのだ。
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