神の導を示す者はいるのか、いないか

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ここで会ったが百年目っ、と剣で串刺しになるのが安易に想像できる。 真っ青になる冷夜の傷をさっと見て颯は腕組みした。 あまり傷は負っていないからすぐ治るが、精神はどうかな…………。 お父さんっ子の冷夜は遙斗の死にショックを受けている。 事前に桜と話して良かった。 「冷夜」 「はい?」 振り向く冷夜に颯は至って真剣な顔で言う。 「一緒に暮らすか」 がきっ、と音を立てて固まる冷夜。 一緒に暮らすという事は、同棲(どうせい)って事で、ひとつ屋根の下で男女が暮らすのだ。 当たり前の事が頭の中で流れる。 「颯さん、本気ですか。脳の病院に行った方がいいのでは……」 「何の心配だ」 突っ込んだ颯が病室のドアを開けた。 笑顔で後ろを指差す。 「引っ越し屋、呼んどいたから」 引っ越し屋の面々が、帽子を取ってよろしくっすー、と頭を下げる。 ぽかん、と呆気(あっけ)に取られた冷夜はあれよあれよと移動させられる。 「わぁ、引っ越し屋さん、私は了承してないっ」 急かされてトラックの助手席に座る。 病室から少なかった荷物が運び出された。 颯が何故か運転席に乗り込み、楽しそうに言った。 「病室以外に居場所ないんだし、いいじゃないか」
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