神の導を示す者はいるのか、いないか

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撃沈する箜と澄ました顔で茶を啜る(すする)シルヴィア。 シルヴィアが啜るのをやめて箜を見る。 「ん?」 箜が問い掛けるとシルヴィアは瞬きした。 「いえ。妹様は今後どうなるかな、と」 兄もそれを危惧(きぐ)していた所だったのだ。 箜は机に組んだ両手を乗せた。 それと気になる事がひとつ。 「冷夜な」 「間違っていません」 実際そうだが。 沈黙する箜にシルヴィアが一言。 「それで、何ですか」 シルヴィアのこの性格が破魔に来た時の荒んだ(すさんだ)心を何故か癒したのだ。 思い出しながら箜は話し出す。 「冷夜は来るつもりはないそうだ」 シルヴィアが頷く。 「目の前で聞きました」 「しかし、冷夜は螢燈に傾倒している訳ではない」 「あ、そうなんですか」 呑気に茶を啜って相槌(あいづち)を打つシルヴィアを睨む。 シルヴィアは黙った。 「元々敵視されていたし、僕が『冷たい夜』を起こしたから憎まれるようになった」 「箜にしては、理性的ですね」 「いつもそうだろう」 隣から睨み返される。 「しかも羽旭母さんの死で決定的になった」 「何でですか?破魔が殺したのに……螢燈なら分かりますが」 不思議そうに首を傾げるシルヴィアに箜は天井を見上げた。
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