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「羽旭母さんの近くにはセブン・イーターがいた」
「ああ、セブン・イーター…『七の喰う者』(ななのくらうもの)」
シルヴィアの瞳が一気に暗くなる。
彼女の父母はセブン・イーターによって殺されたのだ。
箜はシルヴィアの豹変(ひょうへん)に気づいていながらも続ける。
「ここで冷夜は思うだろう。――何故、守れなかったのか、と」
そして、それは不信感を招く。
不信感は募り後々、箜のように死ぬ運命だ、と気付くようになる。
『冷たい夜』で螢燈の味方をする冷夜を殺してしまおう、と考えた時。
嫌だ、と泣く冷夜から甘いミルクの匂いがしたのだ。
赤ん坊と同じ『妹』の匂い。
その時、思った。
――…そうか、妹、かぁ……――
冷夜を助けよう、と静の壜が震えるのを押さえつけながら。
激情が薄れ、壜を手放した。
殺されない事に驚きながらも冷夜は裾を掴み、嫌だ…まだ居て、と懇願(こんがん)した。
妹だから、と殺さなかったのに非情にも箜は振り払った。
それからだ。
泣き虫で甘える冷夜が強くなった。
傷として今も痛む箜は、逆に弱くなった。
なぁんで、だろうねえ。
傷つけたくせに泣いている。
傷付けられたのに踏ん張っている。
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