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「花霞(はなか)赦すとか、赦さないとか…おばさんは捨てちゃいなさいって言うよ?」
少女――成瀬 花霞は眉をひそめる少年――赤城 珀を睨む。
「珀は分からない!両親がいるから」
花霞は肩で息をする。
珀が黙って蛇口を捻った。
ホースを手にする花霞はホースが踊り出すのを見た。
「きゃああっ」
濡れ鼠になった花霞は茫然とする。
珀が蛇口を捻った。
それからホースを花霞から奪うように取り纏めて放る。
フェイスタオルを花霞に被せた。
髪から水滴が滴る花霞がくしゃみをする。
「花霞はばかだよ」
花霞がかちんときて目を見開いた。
珀はわしわし、花霞の髪をタオルで拭きながら憤然(ふんぜん)と言う。
「だって、そうだろ。小さいのに憎む憎むって!楽しい事考えて、毎日わくわくして、それで……」
言葉が続かない事に憤り(いきどおり)を感じる。
珀の、髪を掻き回す力が強くなる。
花霞は俯いた(うつむいた)まま、大人しく座り込んだ。
「楽しんだ方が俺も嬉しいし、おばさん達も絶対嬉しいから……!」
ぱたり、ぱたり……、と泪(なみだ)が落ちて。
花霞は泣いていた。
「知るわけ、ないもん。珀が知る訳……」
珀はきっぱりと、言った。
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