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「でも、花霞を助けたいって思ってる。それは知る理由にならない?」
花霞の顔がぼっ、と真っ赤になった。
「………真剣なのに」
告白と勘違いされた珀がしゃがみ込む。
落ち込む珀に花霞は我に返って、慌ててとりなす。
「えっ、ごめんっ………でも、ね」
訝しげに、珀が顔をあげた。
フェイスタオルを畳み(たたみ)ながら花霞は口を引き結ぶ。
お母さんが望んでなくとも、私は憎んでいるのだ。
復讐したい。
この純粋な気持ちは抱いてはいけないのか。
「私は憎んで、遺された。泣いてるままは、嫌」
珀が険しい顔でタオルを受け取った。
「でも、日向さんは兄が反逆したんだよ?日向さんは関係ない」
花霞はタオルに目を落とした。
「関係ない、ね」
珀がホースを元の場所に戻し、小屋の扉を閉めた。
「そうだよ。関係ない」
燃えて灰になっている紙片を拾う。
花霞の書いた『憎む』はむ、しか残っていなかった。
「私、聞いたの」
「……………えっ?」
小屋から振り返る珀に花霞は虚ろ(うつろ)な瞳で言い繋ぐ。
薄笑いを浮かべながら小さい紙片をくしゃり、と握り込む彼女は本物の『復讐者』に見えた。
からから、と乾いた笑いの花霞の近くに歩み寄る。
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