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「『冷たい夜』を起こした理由は母と妹を助けたかったからなんですって」
急に風が吹いて。
微かな物の焼かれた匂いが消えて。
復讐のしるしである灰も飛んでいく。
珀は目を細めて見送りながら、これで花霞が楽になればいい、と思っていた。
しかし、それは単なる夢物語である事を聡い(さとい)彼は知っていた。
「だから、花霞は復讐するのかい」
珀の震えた声に花霞は気付かない。
はっきり、と復讐者は答えた。
「ええ。理由の二人の内、一人は未だ生存しているから」
勿論(もちろん)、羽旭にも復讐をしたかった。
反逆者の親だ。元凶なのである。
だが、ラッキーなのか羽旭はもう手に掛かっていた。
狙う冷夜の盾がなくなっていき、どんどん殺しやすくなっている。
チャンスは、今しかない。
反逆者も運命の二十歳を迎え、対立する冷夜達はいずれ滅ぶ。
まだ復讐もしていないのに。
「殺人だよ……?」
まだ決心がつかない協力者、珀に花霞は怒鳴った。
「あいつらはもう殺人をやって、のこのこ生きてるの!珀の妹の莢(きょう)ちゃんも殺されたんだよ!?」
「莢は死んでない」
「行方不明なだけじゃない!五年見付かってないから、とっくに死んで―――っ!」
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