神の耀きを知るのか、知らないか

5/14
前へ
/260ページ
次へ
「『冷たい夜』を起こした理由は母と妹を助けたかったからなんですって」 急に風が吹いて。 微かな物の焼かれた匂いが消えて。 復讐のしるしである灰も飛んでいく。 珀は目を細めて見送りながら、これで花霞が楽になればいい、と思っていた。 しかし、それは単なる夢物語である事を聡い(さとい)彼は知っていた。 「だから、花霞は復讐するのかい」 珀の震えた声に花霞は気付かない。 はっきり、と復讐者は答えた。 「ええ。理由の二人の内、一人は未だ生存しているから」 勿論(もちろん)、羽旭にも復讐をしたかった。 反逆者の親だ。元凶なのである。 だが、ラッキーなのか羽旭はもう手に掛かっていた。 狙う冷夜の盾がなくなっていき、どんどん殺しやすくなっている。 チャンスは、今しかない。 反逆者も運命の二十歳を迎え、対立する冷夜達はいずれ滅ぶ。 まだ復讐もしていないのに。 「殺人だよ……?」 まだ決心がつかない協力者、珀に花霞は怒鳴った。 「あいつらはもう殺人をやって、のこのこ生きてるの!珀の妹の莢(きょう)ちゃんも殺されたんだよ!?」 「莢は死んでない」 「行方不明なだけじゃない!五年見付かってないから、とっくに死んで―――っ!」
/260ページ

最初のコメントを投稿しよう!

48人が本棚に入れています
本棚に追加