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日本国本土から遠く離れた島、
『毒羽島(ドクバネジマ)』
面積は、島根県の隠岐島のそれより小さく、
東京都の沖ノ鳥島より大きい島である、
この島では、一定の時期に開催される試験の会場でもあった、
その試験の名前は、
『人生試験』
それは、
人生を賭ける難関な試験であった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
『本日は、『人生試験』に受験いただき、まことにありがとうございます』
船の広い部屋に、若々しい男性がマイクを持って呼びかけていた。
男性に注目しているのは、沢山の人間、
中には外国人も紛れている。
『私はこの『人生試験』第三会場試験官、『剣創建(ツルギソウケン)』です。『毒羽島』までご一緒させていただきます』
ぺこりと、創建という男は頭を下げて言う。
『『毒羽島』まで、あと30分でご到着致します。それまで、この船でごゆっくりしてください』
まぁ、と一言継ぎ、
『これが人生最後の安らぎでない事を、祈っております』
さらりと、不吉な言葉を言ってのける創建。その言葉に恐れるものもいれば、癪に障るように顔を歪めるものもいた。
『では、ごゆっくり』
またぺこりと頭を下げ、部屋を出ていったとともに、受験者達もその部屋から出ていく。
数分後、
部屋には男性と女性、二人だけが残った。
「……何よ、あんた行かないの?」
口火を切ったのは、水色のセミロングに、着流しのような服、腰には刀を差した女性だ。
女性が喋る相手は、
黒いトレンチコートに、耳にピアスをかけ、白シャツを着た男性だ。
男は眠そうな目で、女を見た。
「この前日本に戻ったばっかだから、時差ボケがまだ……」
ふぁ~、と大きく口を開けて欠伸をする。
「こんな調子で試験に出たら、間違いなく落ちるね、こりゃ……」
と、今にも眠りそうに目を閉じる。
「余裕じゃない、人生で最後の安らぎかもしれないのに、どういう神経してんのかしら」
「だろうね、俺は寝る」
男は横に向いて眠りにつく、
女は呆れるように椅子から立ち上がった。
「おっと、聞き忘れた。あんた名前は?」
男は眠そうに目を女に向け、呼び止める。
女は部屋を出る前に足を止めた。
「……『雨宮美舟(アマミヤミフネ)』よ」
名前を名乗って、部屋を出て行った。
「……やれやれ」
去った事を確認すると、男はまた横を向いて眠りについた。
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