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ふと奈河崎は、美舟を見て表情が変わる。
「おい」
「?」
呼びかけられた美舟は、奈河崎の方を向く。
「俺と遊ぼうぜ?試験前は何かと暇だからさ」
しまった。と思い、顔を奈河崎からそらす美舟。
「なにそっぽ向いてんだ。一人で佇むのもつまんねーと思わねーのか?」
精々お前とだけは絡みたくはない。
美舟はさらりと酷いことを心の中で思い、奈河崎の言葉を無視する。
「聞こえてんのか?一緒に遊ぼーって……」
「あたし」
奈河崎の言葉を遮るように、美舟は口を開いた。
もうこの際はっきり言っておこう。ていうか言ってやる。
「あんたみたいな弱い奴、興味が無いのよ。失せなさい」
挑発のつもりで、美舟は毒づく。
実際はそうではない、
無論その挑発で黙る彼では無い。
「……弱い、だと?」
「あの試験官の挑発に乗るなんて、弱い以外に何があるって言うの?さっきの聞いたわ。たかがあんな挑発にいきり立つなんて、ほんと弱いのね」
立て続けて美舟は毒づく。奈河崎の顔が怒りで赤くなる。
「てめぇ!女のくせにでけぇ口叩くんじゃねぇ!」
「だったら、こんな挑発に乗らないで、黙ってクルージングを楽しんだらどう?」
とどめと言わんばかりの挑発。
さりげなく見下すような笑みを浮かべた。
奈河崎の怒りゲージは一気に激怒に変わった。
「いいぜぇ?この奈河崎様を怒らせた事を後悔させてやる!」
ポケットに入れていた両手を取り出し、指を上に向ける。すると爪が一瞬で伸びる。
これには美舟も流石に驚いた。
「俺の能力は『爪使い』!爪を伸ばし、切り裂く!てめぇの体をバラバラにしてやるぜ!」
奈河崎は怒り任せに美舟に飛びかかった、美舟も応戦するように、腰に差している刀を抜こうとした。
すぐに抜刀の意味は、無くなった。
「!?」
美舟の目の前に、何かが突き刺さる。
タコの足のような、大きい足が。
「な、なんだ!?」
奈河崎も、この瞬間に攻撃を止め、
その足を見る。
「な、奈河崎さん……あ、あれ見てください!」
坊主の男が震わせて指を差す。
指の差す方向には、
船を大きく上回る、大ダコが居た。
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