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少しむちゃくちゃな言い分だったが、確かにあの再生力は、異常以外にない。
「でも、なんであの幻覚に触れる事が出来るわけ?」
「あの幻覚を信じ込んだからだよ。あれを現実にないと思えば、触れる事も無い」
そういえば、最初大ダコの足が甲板を思いっきり叩いていたが、そこに傷は一切無い。
「理解したか?」
美舟は、静かに頷き、口を開く。
「じゃあ、一体誰があんな幻覚を?」
「試験官だ。もう『人生試験』は始まってるぜ」
男は拳銃を、甲板の上の階に向けて撃つ。
すると、弾丸が空間に歪曲を生じさせ、素通りした。
そして歪んだ空間から、剣創建が現れる。
「いやぁ、まさかこうも簡単に見抜かれるとは、驚きに至りです」
創建は見下ろすように、ぺこりと頭を下げた。
その行動に、他の受験者も気がつく。
「『人生試験』らしい始め方だな。合図も前兆も、嵐の前の静けさもなく、気がつけば試験開始って事だ!」
「その通り、これは第一次試験、『化怪物遊戯(バケモノゲーム)』でございまして、幻覚を見抜いたものが合格。それが、この第一次試験の合格条件でございます」
他の受験者も、大ダコは幻覚であると気付き、攻撃を止めた。
創建はその光景に、少し残念そうに顔を俯く。
「まぁ、でしょうね、では、
これはどうでしょう?」
創建の背後から、黒い二匹の竜が顔を出す。
大ダコよりは一回り小さいが、本物を思わせるような威圧感がある。
「次はこうも行きませんよ。幻覚と知っても、一瞬でも実在するものと錯覚すれば死にます」
と、黒い竜は、受験者に襲いかかった。
「うわぁぁぁぁっ!?」
受験者はいともたやすく吹き飛び、中には黒竜に食われた者もいる。
「美舟、あれが実在してるいう事を絶対に信じるなよ!」
「…………」
即答はしなかった、もう美舟の中で、最早実在していると錯覚していたからだ。
それを知ってか知らずか、黒竜は美舟に襲いかかる。
「くっ!」
男は呆然としている美舟を抱え、黒竜を頭突きで押し返した。
「……よし、目ェ覚めた」
眠気が無い瞳を、創建に向ける。
黒竜は、ゆらゆらと創建のそばまで寄る。
「貴方は、この存在をどう見ます?」
そう言うと、黒竜は二人に襲いかかった。
このままだと、二人は食われてしまう。
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