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「……大丈夫、そんな黒竜(モノ)は、最初っから、『無い』」
抱えている美舟に、静かに囁き、
そして、最後の一言を、ハッキリとした声で呟く。
するとどうだろう、黒竜は二人を襲いかかる前に、その姿は煙の如く消え失せた。
「……おや?」
創建は、崩さない笑みをやっと崩すように驚く。
「……貴方、どうやって幻覚を解いたんです?」
そのまま、男に向けて話しかけた。
しかし男は、さも簡単に言う。
「悪い夢からおはようございます。と言っておこう」
その言葉に、創建はまた笑みを見せ、どこからともなく、マイク取り出した。
『皆さん!これより『人生試験』第一次試験を終了致します!幻覚に喰われなかった受験者、全員合格者とします!』
はきはきとした創建の声、その後に、受験者達の歓声が響く。
「……何があったの?」
今更我に帰る美舟は、男に抱きかかえられている事に気がつき、すぐに払い飛ばす。
「つれないな、あのままだったら、お前不合格だったぞ?」
「なら長い間あたしを抱くな!」
やれやれと、男は頭を掻いて広い方の甲板に目を向ける。
「……あの六人、全然惑わされてなかったみたいだな」
男の言葉に、美舟も甲板を見る。先ほど混乱な状況だったにも関わらず、六人はその位置から、一歩も動いてなかった。
「全員、幻覚だって分かってたの?」
「みたいだな、俺もだけど」
『まもなく、『毒羽島』に到着致します、受験者はすぐに下船の準備をお願いします』
スピーカーから、創建の声が響き、男は、やっとかと待ちくたびれたように、船の中に戻ろうとした。
「……そういえば、あんたの名前聞いてなかったわね」
あぁ、と男は気がつくように、美舟の方を振り返る。
「俺は『四季織一瀬(シキオリヒトトセ)』、よろしく」
こうして、『人生試験』は、開始された。
『To Be Continued....』
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