るぅ!

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 しかし、それは叶いませんでした。  女の子がゲンゾウさんをキッと睨みつけ、ぱっと身を翻してしまったからです。女の子は、そのまま自分の家へ向かい始めました。  もはやこれまでか……!  しかしそれでも、ゲンゾウさんは一縷の望みにかけて女の子を呼びとめようとしました。  必死で手を伸ばして口を開きます。が、女の子の名前を知りません。 「る、る、るぅっ!!」  とっさに口をついて出たのは、あのふわふわした子犬の名前だけ。  これでは駄目だ……と内心がっくりとうなだれながら、ゲンゾウさんは伸ばしていた手を引っ込めました。  しかし、ゲンゾウさんの心中に反して、女の子はぴたりと立ち止まったのです。そして彼女は、様子を窺うように顔だけでおずおずと振り返りました。 「……るぅ?」  こっちを見た女の子が確かめるかのように口にしたその名前に、ゲンゾウさんは恐る恐る頷きました。  るぅはというと、自分の名前を呼ばれるのが嬉しいのか、ぱたぱたとしっぽを振っていました。
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