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月日が流れた後、ある日の話。
ハナとるぅは、よくゲンゾウさんのところに遊びに行きます。
ハナは、ゲンゾウさんのことを「ゲンさん」と呼ぶようになりました。
ゲンゾウさんは無口ですが、ハナはよく喋るようになりました。ハナが喋るあれこれを、ゲンゾウさんは黙って頷きながら聴いてくれます。
るぅはみるみる大きくなって、もうハナには抱っこできなくなってしまいました。でも、相変わらずもふもふしています。
いまも変わらず、二人ともるぅが大好きです。
「ようちえんの子がね、ゲンさんのこと『こわい』って言うの」
「そうか」
「私、怖くない、って言ったのに。嘘だって言うんだよ」
「ははは」
「こわくないのに……」
「ありがとう」
「なんでかなあ……あ、るぅが散歩いきたがってる」
「お、行くか」
「うん!いく!」
そこで、るぅがいかにも嬉しそうに、大きく一声「ワン!」と吠えました。
言葉がわかっているみたいだね、可笑しいね、と、ハナとゲンゾウさんは顔を見合わせて笑いました。
るぅはあの日からずっと、二人の笑顔の真ん中にいるのでした。
確かに触れられる、温かな幸せがそこにあるのでした。
おしまい。
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