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―★―
ゲンゾウさんが縁側に腰掛けてうつらうつらしていると、ふいに、足下でなにかが動く気配がありました。
反射的に足をひっこめ……ようとしたものの、膝の関節が痛んで顔をしかめるゲンゾウさん。目はすっかり冴えてしまったようです。
ゲンゾウさんは脇においてあった眼鏡をかけて、不思議そうに地面を見わたしました。
すると、ゲンゾウさんをびっくりさせたものは、まだゲンゾウさんの足下にいました。
なんとそれは、こいぬ。
薄茶色の、ふわふわした毛並みの愛らしいこいぬです。赤い首輪をつけているところをみると、どこかの飼い犬でしょうか。
ゲンゾウさんの目はたちまち優しくなりました。
手を伸ばしても、こいぬは逃げようとしません。そこで、ゲンゾウさんはこいぬを抱き上げ、ひざの上に置きました。
可愛がる気まんまんです。
こいぬの首もとを撫でようとして、ゲンゾウさんは気づきました。
首輪に札がついています。よくよく見るに、子供の字で「るぅ」と書いてあるようです。
「……るぅ?」
ゲンゾウさんがおそるおそる呼んでみると、「るぅ」は確かにしっぽを振りました。
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