るぅ!

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 るぅ?  最近耳が遠くなってきたものだから確信は持てませんが、ゲンゾウさんにはその声が「るぅ」と言っているように聞こえました。  ゲンゾウさんの膝の上にいる「るぅ」はというと、声がしているであろう方向を見てしっぽをぱたぱたと振っています。  おそらくいま叫んでいる女の子が飼い主なのだろう、とゲンゾウさんにもわかりました。  早く返してあげなければ。  少し名残惜しく思いつつも、ゲンゾウさんは声の主を探そうとるぅを抱いて立ち上がろうとしました。  しかし。  がっし、とゲンゾウさんがるぅの前足の両脇を掴むと、るぅはびっくりしたように足をじたばたさせるのです。ゲンゾウさんは危うくるぅを落っことすところでした。  るぅもゲンゾウさんも、抱っこには慣れていないようでした。  ゲンゾウさんが仕方なくるぅを地面に下ろすと、るぅは庭をうろうろし始めました。  呼ばれてるなあ、けどここにもいたいなあ、どうしようなあ。  そんな風に悩んでいるように見えて、ゲンゾウさんはおかしくなりました。  そこでふと思いついたゲンゾウさんは、庭の門のところまですたすたと歩いてゆき 「るぅ」 と呼んでみました。  すると、うろうろしていたるぅと目が合ったのです。 「るぅ」  もう一度呼ぶと、るぅはトコトコとゲンゾウさんのほうに歩いてきました。  よし、これなら。  ゲンゾウさんは、そのままるぅを連れて隣の女の子の家に向かいました。
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