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―☆―
「るぅ!るーぅー!」
玄関を開けたハナは、めいいっぱい大きな声で叫びました。
るぅはいいこだから、きっともどってきてくれる。
そう信じて。
けれども、るぅは戻ってきません。鳴き声すら聞こえません。ハナの不安は大きくなるばかりです。
「るぅ……」
涙声で呟きながら、ハナは庭を見渡しました。
門は閉まっていますが、下に隙間があります。ちいさなるぅなら易々と通り抜けてしまうでしょう。
左右は垣根です。そこの隙間は、るぅが通るのは少し大変そうです。でも、頑張れば通れるかもしれません。
そのとき、ハナは気づきました。左側の垣根に、少し広めの隙間が一か所だけあることに。ちょうど、子犬一匹が通れそうなくらいの大きさです。
るぅはおとなりさんにいるのかしら……。
ハナは、左側のお隣さんを一度だけ見たことがありました。お母さんと一緒に散歩に出かけたときに、たまたますれ違ったのです。
恐そうな人でした。恐そうだな、と思って見ていると、ぎろっ、とこっちを見てきて、一層恐くなったのでした。そういえばあの時も、泣きそうなのを必死でこらえたのです。
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