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―★―
ちょうど隣の家に向かっているところでその門から女の子が飛び出してきて、ゲンゾウさんはとても驚きました。
女の子はゲンゾウさんを見てはっとしたように目を見開きました。その一瞬後に、すぐにゲンゾウさんの後ろをトコトコついてくるるぅを見つけ、更に目を真ん丸くしました。
そして、ゲンゾウさんがさっき何度も聞いたあの声で叫びました。
「るぅ!」
女の子の叫び声に応えて、テテテッとるぅが駆け出します。向かう先はもちろん、声の主のもとへ。
るぅが近くに来るなり、女の子は手慣れた様子でるぅを抱き上げました。るぅは少々じたばたしましたが、すぐに大人しく彼女の腕の中に収まりました。
「るぅ……」
そう小さく呼んだ女の子は優しく微笑んでいて、その目には涙が光っていました。
ゲンゾウさんも一安心。しかし、束の間の心癒されるひと時が終わってしまったのは少々寂しくもありました。加えて、「飼い主」としての格の違いを見せつけられたような、ほんの少しの敗北感も。
そのまま立ち去っても良かったのですが、女の子に抱かれたるぅは一層ふわふわに見えて、とても幸せそうで、
(せめて最後にもう一度だけ撫でたい……)
と、そろりと女の子の方に近づき、おずおず手を伸ばしました。
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