第壱夜 御曹司。

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さっき雅則様を案内した時扉を開けたままで来てしまったせいか次に来た人物…麗様はもうエントランスに入っていて今日から自分が暮らす屋敷の中を見回していた。 「遅くなって申し訳ありません、今日から麗様のお世話をさせていただくことになりました執事の紅花翔太と申します、これからよろしくお願いします」 慌てて駆け寄って頭を下げながら言ったものの麗様から返事はなくてそんなに怒っているのかなと思ったものの昨日念入りに見直したプロフィールを思い出してばっと顔をあげるとやはり思った通り麗様は無表情のままスケッチブックをこちらに向けていた。 『こちらこそよろしくお願いします、荷物が沢山あるんで大変だと思ますけど全部俺の仕事道具なんて丁寧に運んでくださいお願いします』 「はいかしこまりました…後程丁寧にお部屋に運ばせていただきます。先ほど、雅則様が来られて大広間で待機していらっしゃるので取りあえずそちらに案内してもよろしいでしょうか?」 スケッチブックに書いてある文字を(芸術家さんだから綺麗な字だなぁ…)読んでから笑顔を向けて対応すると今度は無言でこくりと頷いて俺が動き出すのを待つようにじっとこちらを見つめている。 少しくらい話せばいいのになんて思ってしまったけど影山さんですら声を聞いたことがないらしいので今はまだ諦めて大広間へと麗様を連れて歩き出す。 さっきは雅則様と会話する余裕はあったけれど麗様の場合会話するもあちらは無音だしと思いさっきとは打って変わって無言で大広間のドアを開ける。 「あ、麗ちゃーん!ひっさしぶり!」 『翠川くん、元気でしたか?』 「うん、学校はやっぱだるいけどそれなりに楽しくやってるよー!」 大広間に入るなり雅則様がこちらに走り寄ってきて麗様に思いきり抱き着く(いきなりすぎて驚いたけど麗様はなんか普通だな…)と麗様は無表情のまま落ち着いてぱらぱらとスケッチブックをめくりその会話に応じる。 そんなどこから見ても異様な光景を目にして苦笑いを浮かべるものの兄弟水入らずの会話なわけだし水を差すわけにもいかずに麗様の荷物を運ぶために玄関へと再度向かう。 「…開けたままにするなよ、不用心だな」 .
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