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「え…あ、も、申し訳ありません!」
いきなり聞こえた声に驚きながらそちらに目をやるとこちらを思いきり睨みつけている人物、四男の純也様でその目力と迫力にびくりとしながら慌てて謝るとそんな俺には目もくれずに純也様はエントランスから二階へと通じる階段を上がっていく。
「あ、あのっ…!純也様、俺今日から貴方様たちの執事をさせていただく紅花―」
「知ってるよ、名前くらい」
「は、はい…よろしくお願いします。それでお先にいらっしゃったお二人には大広間に集まっていただいてまして…」
「俺はあいつらとは極力一緒にいたくないんだよ、夕食の時間になったら呼んでくれ、俺の自室はどこだ?」
「…階段を昇った右側の一番奥のお部屋でございます、夕食は夜の7時を予定しておりますのでその時間を目安におくつろぎくださいませ」
いきなりの勝手な純也様の行動に驚き、内心少しイラッとしながら(年下なのになぁー…)言われた通りに部屋を教えると何も言わずに俺に背を向けて階段を上がり長く続く廊下へと消えて行った。
いきなりのことに小さくため息をついて我ながら撫でていると思っている肩を更に撫でさせて意気消沈していると背中にぴたりと人の体温が触れるのを感じて振り返るとこちらをにやにやと眺めている一樹様の姿が(い、いつのまに来てたんだ…)
「んふふ、新人執事さんも苦労が絶えませんね?純也はいつでもあんな感じですから気にしない方がいいですよ?」
「いえ、未熟な俺も悪いですから…一樹様も、ちゃんとお出迎えが出来ずに申し訳ありません」
「気にしなくていいですよ…顔あげてくださいよ、はーなさん」
純也様に叱られてやや弱気になった俺が一樹様に頭を下げると少し驚いた様子の一樹様であったけれど、親しげに名前(というかあだ名?)を呼んできてそれに従うように顔を上げる。
すると一樹様は俺の顎に手を添えて何の躊躇もなく俺の唇に自分の唇を重ねてきた。
き、キスされた…!と俺が驚いた時にはもう唇は離れていて満足げに一樹様は笑みを浮かべ荷物を手渡してきて、まだ放心状態ながら俺はそれを受け取った。
驚きのラッシュに眩暈を覚えならもなんとか正気を保って一樹様を大広間へと案内した。
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