第壱夜 御曹司。

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「サキー!おっひさしぶり!」 「うお…相変わらず元気そうですね、翠川さん…海野さんもお久しぶりです」 『久しぶりです、一樹さん』 大広間に一樹様に飛びついてきた雅則様に俺は面食ら食ったもののどうやら一樹様は慣れているらしく抵抗することもなく自分より大きな雅則様の身体を受け止めてその柔らかそうな茶色い髪の毛を撫でながら笑みを浮かべ、麗様へと視線を移して笑みを絶やさないままに挨拶をする。そして麗様はそれにスケッチブックで答える、異様な光景(でもこの家だったらこれが当たり前なんだろうな…) 一樹様から受け取った荷物を誰も座っていないソファーの隅に置いて一度奥に行き、カップに紅茶を注ぎ(紅茶の美味しい入れ方も全部)(、影村さんに教えてもらいました…)三人がわちゃわちゃしている前へとそれを置くと満面の笑みで雅則様にお礼を言われる。 「はなちゃん、あんがと!紅茶、久しぶりに飲むなぁ」 「貴方の家、基本的に緑茶ですもんね」 「そーそー、俺そんな和風なキャラじゃないのにさー!」 『ありがとうございます』 「いえ、皆さんお楽しみのところ申し訳ないんですが本日のご予定を言ってもよろしいですか?」 「あ、はいはーい!」 「手短にお願いしますよ、俺移動長くて眠いんですから…」 「………………」 愛想よくニコニコと笑いながら俺を見つめる雅則様、欠伸をかみ殺してリラックスした姿勢で俺を見つめる一樹様、無表情そして無言でただ俺の持ってきた紅茶とお菓子に手をつける麗様。 三者三様の反応を見せる三人に苦笑いを向けながら三人の前に立って取りあえず一礼をする。 「本日は夕食を皆様一緒に食べていただきます、場所はこの大広間の向かい側のお部屋でございます。夕食は何時からがよろしいでしょうか?」 「俺何時でもいいですよ、元々そんなに喰わないから腹減ってないし」 「んじゃ、俺は8時がいい!」 『おれはいつでもだいじょうぶです』 「では、雅則様の言う8時にいたしましょう純也様にも伝えておきますね」 「え?純也きてんの?」 「俺見ましたけど、直ぐに自室に行きましたよ、相変わらず俺らは嫌われてるみたいですね」 興味なさげに冷めた声で一樹様が言った言葉に「そっか…」と寂しそうな表情を浮かべていた。 .
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