第壱夜 御曹司。

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「こちらが一樹様のお部屋です」 「はいはーい、っとやっぱ綺麗ですねぇ」 大広間での集まりが解散となり一人一人を部屋へと案内する。 取り敢えず一番近くの部屋である一樹様の部屋の前へと行くと彼と雅則様(麗様は後ろでぼーっとしてる)は部屋に意気揚揚と入っていき、人一倍大きなベッドへと二人で寝転がる。 その光景を微笑ましい兄弟の姿だななんて思っていたのも束の間一樹様が何の躊躇いもなく雅則様にキスをする(…え、やっぱりこれがこの家だと普通なのか…?) 「んはっ、相変わらずちゅーすんの好きだねぇー」 「翠川さんの唇久しぶりですけどね、普段のひとたちより柔らかくて好きです」 「おっさんには負けたくないよー」 「執事さんの唇も柔らかくて良かったですよ?」 「え!?いいなぁー、はなちゃんとちゅーしたの?」 二人の会話とイチャイチャと形容した方がいいようなじゃれつきあいをぽかーんとしながら見ているといきなり話題が俺へと向いてはっとしてじっとこちらを(というか俺の唇を)見つめてくる雅則様に苦笑いを向ける。 ああ、あれは俺のファーストキスだったのになんてぼんやり考えていたら何時の間にか雅則様が目の前に立っていてがしりと肩を掴まれて何かと思ったらどんどん近づいてくる顔にデジャブ(というかさっきあった俺の中では大きな事件)を感じて慌てて肩にある手を退けてさっと彼から離れる。 「冗談はやめてくださいね、雅則様」 「えー、サキとはちゅーしたんでしょう?したんでしょう?」 「それとこれとは話が別です」 「んふふ、可愛らしかったですよ?ぽかんとした表情が」 「俺をからかうようなことは言わないでください!」 「はいはい、すいませんねー」 さっきのことを思いだしてしまって顔が熱くあるのを感じながら目一杯の抗議をすると悪びれた様子もなく俺を見てニヤニヤ笑いながら俺を見つめる一樹様とそんな俺らの様子をいいなと言いたげに見つめている雅則様、そして何も言わずにずっと見つめている麗様。 「あっ…では、麗様のお部屋に次はご案内しますので一樹様はここでゆっくりしていてください」 「はいはーい、俺多分寝てるんで起こしてくださいね執事さん」 「かしこまりました」 「じゃあ、サキまたご飯のときにねー!」 .
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