第壱夜 御曹司。

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雅則様の部屋を出てほっと溜息をついてから厨房へと向かう。今日から五人分の食事を作らなければいけないしやることは山積みだ。 ここにきてからの決まりの一つとして食事は全員で食べなければいけないっていうのがあったんだけど…あの感じだと気苦労が絶えない食事になりそうだな…。 そもそも純也様と三人があんなに仲が悪いのはなんでだろう?いや、確かに一樹様と雅則様のあのどこか軽い感じとは合わないと思うんだけど、麗様まで毛嫌いする必要はあるんだろうか…。 『全員名字が違うのはお母様が違うからですよ、正式な後継者になった方のみがご主人様の名字を名乗ることを許されるのです』 俺が疑問を投げかけた時に影村さんが淡々と言っていた言葉とあの三人と純也様の仲の悪さとはもしかしたら関係があるのかもしれない。 『後継者になれるのはたった一人』 彼らが胸に抱えている、そしてここにいる時にずっと胸に抱えていなければいけない気持ち。そんな義務にも似た感情を持ってこの生活に望んだわけだし…俺には見えない、そして分からない火花がもしかしたら四人の間には散っているのかもしれない(少なくとも雅則様からはそんなオーラ微塵も感じなかったんだけどな…) そんなことを一人で考えている間に厨房までたどり着いて、上着を脱いで慣れた手つきでエプロンをつけ、料理を始める。 今日は折角五人そろっての(あ、夕食は俺も一緒なんだよね)(これも凄い不思議なんだけど…)初めての夕食なわけだし得意料理でも作るかとハンバーグの元を手でこねる。 そういえば、一樹様の好きな食べ物って確かハンバーグじゃなかったっけ? 確か雅則様は鶏のから揚げとか麻婆豆腐とかが好きで、辛いものは苦手で 麗様は基本的になんでも食べるけどお魚が好きだとかで 一樹様はハンバーグとオムライスが好きで貝類が嫌いとか 純也様は自炊もなされるとかで、辛いもの苦手なんだっけか? こう考えると四人のこと俺結構覚えたんじゃね?と少し上機嫌になっているとがちゃりとドアが開いて反射的にそちらを見る 「あ…っ」 「…あ、じゃねぇだろ、主人に向かって」 「す…っ、すいません!」 俺が慌てて頭を下げた先には顰め面の純也様の姿が。 .
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