第壱夜 御曹司。

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「コーヒー飲みたいんだけど、いれてくんない?」 「は、はい!かしこまりました」 壁にもたれかかりながら俺に言ってくる純也様に何だか少し可愛いななんて思いながらもコーヒーメーカーにカップをセットする。 それをじっと見つめられているのに緊張して少し手が震えそうになってふっと大きく深呼吸をしていると純也様はいつの間にか厨房の中に入ってきていて、じっと俺が作りかけているハンバーグの元を見つめていた。 「…どうか、なさいました?」 「ハンバーグ、作るのか?」 「は、はい…そのつもりですけど、純也様はハンバーグお嫌いですか?」 「嫌いじゃないよ、ただ…いや、なんでもない」 何かを言いかけた純也様は俺を一瞥してから言いかけていた言葉を止めて俺の手にある出来上がったコーヒーを手に取って厨房を出ようとする。 「あっ…!純也様、夕食のお時間なんですが、八時になりました」 「分かった、その時間を目途にやってること終わらせるから時間になったら呼びに来てくれ」 「かしこまりました、お部屋でゆっくりなさっていてください」 「…俺に、ゆっくりする時間なんてないんだよ」 純也様に言い忘れていたことを報告して去ろうとする彼に頭を下げているとぼそりと小さな声で呟いた声に驚いて頭を上げるとどこか寂しそうな顔で俺をちらりと見てから踵を返して帰って行った。 今の表情はなんだ…と思わず固まってしまう、俺。だってあの表情といい言葉といい…純也様の本心が本当に分からなくて一人で首をひねる。 ただ、一つだけ言えることはあの冷たい表情や言葉彼の本心ではないということ。何か…隠してるってこと? そんなことを自分でモヤモヤと考えていたものの結局答えなんて出ないわけで、そもそも今日会ったばかりのあまりしゃべらない人物のことなんて分かるわけがないと考えるのをやめてハンバーグを作ることに集中する。 「お、いい匂い!」 「んふふ、ハンバーグですねぇー」 「お二人ともいらっしゃいませ、もうできますよ」 呼びに行こうと思っていたところに仲良く雅則様と一樹様が来て、他のお二人も呼んで五人での食事が始まった。 .
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