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「あ、あのー…」
「はい、どうなさいましたか?」
執事さんに促されるまま俺は洋館の中へと足を踏み入れた。
中は外見に負けないほどの豪華な造りになっていて、大理石の床に靴底が当たる度に乾いた音がホールのような玄関に響き渡る。歩く俺と執事さんの頭上には大きなシャンデリアがあり、目の前には赤い絨毯の敷いてある大きな階段がある。
まるで絵に描いたような豪華な内装に俺はずっと度胆を抜かれていて、こんなところで暮らしていけるのか不安になってきた。
俺の前を歩く執事さんはそんな俺には気づいていない様子でさっさと歩みを進めていく。
俺はきょろきょろと辺りを見回しながら歩いていたもののそこでふと俺と執事さん以外に人影もないし、物音もしないのに気付いて話しかけると執事さんは歩みを止めてこちらを見つめてきた。
「えっと…あの、俺と貴方以外に人の気配がしないんですけど…」
「ええ、この屋敷に今いるのは私と貴方様だけですから」
「あ、そうなんですか…って、えぇ!?」
感じていた疑問を執事さんに投げかけるとなんとでもないという風に真顔で俺に話しかけてくる執事さんに俺は一瞬流されてしまいながらもちゃんと反応してから驚きながら執事さんに詰め寄る。
「どういうことなんですか!?俺、住み込みで働くって聞いたんですけど、俺以外誰もいないなんておかしいじゃないですか!俺、バイトは色々やりましたけど屋敷のお手伝いみたいな仕事なんてしたことないですし大体、俺にそんな仕事できるかも…」
「わかりましたから、少し落ち着いてくださいませ…紅花様」
俺が脳内に浮かんだ限りの疑問、そして不安を執事さんにぶつけると彼は俺の剣幕に呆気にとられながらもその俺を制止するように顔の目の前で両手をかざせば落ち着いた俺を見つめて小さくため息をつきつつ、メガネをあげて再度俺を見つめる。
「色々と疑問はあると思いますが、今から紅花様のお部屋にご案内致しますから、詳しい話はそこでいたしますのでひとまずついてきていただいてよろしいですか?」
「あ…は、はい…すいません、取り乱してしまって…」
「いいえ…ちなみに私、影村と申します」
一言、影村さんは俺に自己紹介をしてから再び歩き出し俺は大人しくその後ろをついていくことにした。
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