第零夜 執事。

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「皆様、紅花さまと同じお年くらいではないでしょうか?私が仕えていたご主人様のご子息に当たりますので」 「そうなんですか…えーっと、その影村さんのご主人様はこちらにいらっしゃらないんですか?」 「ええ、こちらのお屋敷にはご子息の皆様しか住んでいらっしゃいません」 「…つまり、俺はこの写真の4人にお仕えするってことですか?」 ちゃんと写真を見てみると俺より年上の人は長男の人しかいなくてそれ以外の人は俺より年下ばかりだった。名前や身長、趣味まで書いてある事細かなプロフィール、これがあれば確かに話すこともできるかもしれないけどやはりそれ以前にしなければいけないこと覚えなければいけないことが多すぎてまたため息をつく。 「紅花さま、あまりため息ばかりつかれるとただでさえ辛気臭い顔が更に辛気臭くなりますよ?」 「…え?」 「ああ、申し訳ありません…ただ、客人ではあるものの今からは同じ立場の人間でありますのでいいかなと思いまして、その表情ではあまりにも…その、はっきり言って仕えられる側も気持ちのいいものではないと思いますので」 ……………… 少しだけ口角をあげて影村さんが俺に向かって躊躇なく言ってきた言葉はぐさりと俺の心に突き刺さってこれが毒舌か…なんて頭の隅っこで考えながらも言葉は何も出てこずにただ俺は口をぽかーんと開けたまま目の前の影村さんを凝視していた。 影村さんはそんな俺の姿を見てまたくすりと笑って大きなクローゼットを開くとそこには沢山の…同じ服が掛けてあった。影村さんとお揃いの、服が沢山。 「全て紅花さまの身長、体型に合わせて作っておりますのでサイズはぴったりですよ安心してください」 「…俺の身長とか体型とかどこで調べたんですか?」 「それは企業秘密です」 にこりと笑って言われた言葉に俺はもう何も言えなくてクローゼットを開いたってことはこれを着ろってことなんだろうなと思ってその中の一つを手に取る。 さわり心地だけでそれが上等なものだっていうのは分かってこんなものここにこなければ一生着ることなかったんだろうななんて思いつつ服をゆっくりと着替える。 「似合ってますよ、紅花さま」 「そ、そうですか…?」 「ええ…少々肩が…」 「撫で肩なのくらい知ってますよ!」 .
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