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「では、紅花さま…いえ、紅花がこれからしなければいけないことをお教えいたします」
「は、はい…!俺も接客業とかはやったことあるんですけど執事はさすがに…」
さりげなく俺の呼び方を影村さんが変えて、これからもう同じ立場ということなんだろうなと感じれば恰好もあってか気持ちが引き締まるのを感じて肩に力が入る。そんな俺の姿を一瞥してから影村さんは先ほどの貰ったファイルを手に取る。
「まずは紅花がお仕えするご子息様のことを覚えてください…お名前くらいは先程見た時に覚えましたよね?」
「えー…海野麗、翠川雅則、鷺ノ宮一樹、村崎純也…でしたっけ?」
「流石、完璧です。ただ今度ご本人様たちにお会いしたときはお名前に様を付けて呼ばなければいけませんよ?私たちは執事ですから」
さっき見た名前を順番に唸りながら思い出して言っていくとどうやら合っていたらしくにこりとした爽やかな笑顔を見てほっと溜息をついていると俺の安堵はまだ早いということなのか影村さんは俺の顔を覗き込んできた。
「お名前と顔を一致させ皆様の好きなものや趣味まで全て覚えていただきます、勿論敬語もしっかりと身に着けてくださいませ…と言いたいところですが」
「え?」
「紅花の口調等には口出しするなとご主人様からきつく仰せつかっておりますのでそこは貴方のできる範囲で失礼のないようにしてください」
「は、はぁ…」
影村さんのいうご主人様とは多分この四人の父親かなんかなんだろうけどなんで俺のことにまで口出してくるんだろうか?(まぁ、俺を雇った時点で)(十分変だけどさ)
それからの日々は色々と大変だった。
執事と一言に言っても俺が任せられる仕事は食事の用意から部屋の掃除から庭の手入れ、洗濯まで様々でそこら辺の家政婦さんと変わらない。その上、執事として守らなければいけない作法、四人のご子息のプロフィールの暗記とやることだらけの状態。
影村さんも全く加減も甘えもない。まぁ、短い期間で俺を完璧にしなければいけないわけだし、ご主人様から直々に任された仕事なわけで重圧もあるんだろう。
そんなわけで、あっという間に養成期間か終わってしまった。
第零夜 執事。
(俺の人生が180度変わってしまった)
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