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視線を彼女の後方へと移し、少し目を細めてからその先にあるモノを眺める。
彼女の後方にはしばらく砂漠が続いていた。だけどその先、僕達が立っている場所からだとかなり歩かないといけないが、砂漠の向こうには観覧車やジェットコースターといった大型遊具の連なる光景が広がっていた。砂漠の隣に遊園地とはなんだか不釣り合いというか、不格好な風景である。
僕は今まで自分の夢から出たことがないから分からないが、もし彼女の言うことを信じるのなら、砂漠の向こうにあるのは別の人間が見ている夢ということになるのだろう。
世界のどこかで、僕や彼女と同じように眠って見ている、夢。
明晰夢を見ている僕なら、その誰かの夢に入り込むことができる。
……あくまで、彼女の言うことを信じるなら、だが。
こんな荒唐無稽な話を信じろってほうが難しい。
「……はあ」
「ん?」
僕の溜息に彼女は小首を傾げるが、それを視界の端に捉えながらも無視する。
もう一度言うが、僕は彼女との距離を掴めていない。その一番の原因はおそらく、僕が彼女のことを信用できていないことにあるのだろう。
信用や信頼がないまま人との距離を縮めるだなんて、自殺行為にも等しい。
そもそも僕が彼女を信用できない理由として、彼女の存在そのものがある。
つまり、彼女は本当に『存在』する人物なのか、ということ。
僕と同じように世界のどこかで眠っていて、夢を見ているだけの少女なのか、ということ。
僕がこれまでの人生で学んできた『普通』と照らし合わせてみれば、彼女が如何におかしなことを言っているかが分かる。……いや、わざわざ照らし合わせるまでもないか。
脳が反射的に、そんなことはありえないと判断を下すのだ。
人同士の夢と夢が繋がっているだなんてありえない、と。
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