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「お待たせ」
そう言って栞の隣に座る。
遅い、と彼女は頬を膨らませた。
外見と違い、彼女の言動や仕草には割と子供っぽいところがある。僕はそれが、栞の一番の魅力だと思っていた。
「それじゃあ、寝ようか」
部屋の照明を操作するリモコンに手を伸ばす。すると突然、栞はその手を引っ張り、僕を自分の方へと引き寄せた。ベットの上に座って抱き合うような体勢を作ると、彼女は僕の左肩に顎を乗せる。
――今はこの気分なのか。
彼女曰く、これが最も好きな体勢らしい。この体勢のまま半日過ごしたこともあった気がする。
多分、嘘だが。それは体感での話だろう。耳に吹きかかる彼女の吐息がこそばゆい。
ちなみに抱きつかれている僕はというと、若干、腰が引き気味だった。ご了承ください。
それはさておき。
居座らせてもらった手前、彼女のやりたいことには出来る限り付き合いたいのだが、僕だっていい加減眠い。
修学旅行中のようなテンションであればこのまま夜更かしをし、「僕、実は隣のクラスのあの子が好きなんだー」なんて、俗に言う恋バナとやらに花を咲かせるのもいいが、恋人同士でそれをやってどうする。そもそも、隣のクラスの子がーなんて話をすれば、僕は即刻この部屋から叩き出されるだろう。
「栞、もう寝よう」
「んー」
船はいつの間にか、かなり沖の方まで進んでいるようだ。健闘したがもう限界らしい。
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