第一章:現実の外側、非現実の内側

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 02  僕がこの世界に跳ぶようになってから、もう三週間程が経つ。  不思議なものだ。あれだけ目新しかった光景も、今ではさほど興味を引くものでは無くなっている。世界で一番恐ろしいものはやはり、時間なのかもしれない。  僕が今いる場所――今いる世界は、夢の中だ。 『朝起きたら虫になっていた』というくらい唐突ではあるが、本当にそうなのだから仕方がない。虫になっていないだけマシだ。  夢。ユメ。ゆめ。  人種や貧富の差も関係ない、神様が与えてくれた誰もが自由に自由を得られる世界。  だけど誰もが当たり前のように見て、目を覚ますと同時に忘れてしまう。そんな脆くて不安定な世界でもある。人によっては夢も何もない、妄想のみで創造された空間。 「……」  砂の上に寝転がったまま、ぼうっと空を眺める。空には雲一つない青空が広がっていた。  いつもとなんら変わらない、僕が創った世界。夢なのに夢がない、というか何もない世界。  僕は広い砂漠の中に寝転んでいた。  起き上がると砂が服や髪の毛からぱらぱらと落ちていくけど、これといって不快感はない。ここは夢の中だから、砂が身体についたところでそれを感じることはできないのだろう。  右側の頬に付いた砂を落とす。  ぐるーっと辺りを見渡すけど、いつも通りただ砂漠が続いているだけだった。僕の夢の世界にはいつも、砂漠のみが広々と広がっている。
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