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照れ臭そうにはにかむ彼女を見て、胸が少しちくっとした。
僕はそれほど将来を見据えているわけではないし、ただ進学して、そのままただ学校に通うだけだろう。
でも彼女は、明確な目標に向かって進んでいる。自分の将来を自分の足で歩いている。
正直、眩しかった。
眩しかったから、僕は背けるように空に視線を戻した。
彼女もそんな僕を見て空を見上げ、またぽつりと呟いた。
「来月から私達、離れ離れだね」
寂しげな声音だった。こうしてこの場所で一緒に空を眺めるのも、今日が最後だろう。
それを聞いた僕は、無意識に口を動かしていた。
「そうだね。でも、そうじゃないかもしれない」
「どういうこと?」
「だってさ、空はずっと繋がってるでしょ。どこにいても、見上げる空は離れてないよ、きっと」
「何それ、理屈っぽい」
「そうだね」
「……ふふっ」
くすくすと笑う彼女を見て、僕も自然と笑みが零れていた。
「ね、こっち向いて?」
ひとしきり笑ったあと、彼女はそう言って僕のブレザーをそっと掴んだ。
僕が彼女の方に顔を向けると、
「……ん……」
――どのくらいそうしていただろう。彼女は上気した顔を離し、また空を見上げた。呆けていた僕もそれに倣う。
「私、卒業したら、またこの街に戻ってくる」
「……うん」
「そしたらさ……またこうして、隣で空を見上げても、いいかな?」
「……。もちろん」
寝そべる僕らの距離は、さっきよりも、少しだけ近づいていた。
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