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「職員室に不審者団体が乗り込んで来たそうだ」
また大きく教室内がざわめいたのを大橋は「静かに」と制する。
「今から先生は職員室に向かって、彼らの要求に応えるつもりでいる。全校生徒、今すぐ速やかに体育館へ避難すること。既に一年生から避難を始めているそうだ。体育館近くには他の先生達もいるから安心して、落ち着いて。向こうに着いたら警察にすぐに保護してもらえる筈だ」
まるで漫画の世界の話のようだ、と誰もが思ったことだろう。ふと不安に震えている女子生徒に、先程ベランダを見つめていた男子生徒、駒場が慰めるように声をかけている姿が目に入った。今もなおベランダの向こうをしきりに気にしているようだ。
「委員長、任せられるか」
大橋がクラス女子委員長である星川、男子委員長の柏にみんなを体育館へ避難させる旨をもう一度慎重に伝える。主に、隣のクラスの生徒・先生と合同で避難行動し、向こうに着いたら落ち着いて点呼をとること。
まだこの状況を理解しきれていないような様子の柏をよそに、普段から芯の強く、誰からも頼りにされている星川は大きく頷いた。そうして、大橋が「気をつけて」を言い残し教室から急ぎ足で出て行く。
「みんな、貴重品だけ持ってすぐに教室の後ろに並んで。鞄は置いて、できるだけ重い物は持たないで」
すぐに星川が席を立ち、てきぱきと指示を告げる。柏も続けて席を立つが、星川をおたおたと見守っているだけだ。
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