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その夜、翔大はぼんやりと畳に横たわってシオンやイオリの言葉を考えていた。
『かわいそうな子ぉ。……ボクとおんなじ』
『鬼-オレ等-から見りゃ、人間なんざその程度の生き物だ』
『ボクたちが人間にそこまで期待してると思うの? そんなことする人間如きに?』
『もう誰も、どんな存在でも、アイツは救えない。ムダな希望も、期待も持つな』
ぐるぐると回る、二人の言葉に思考が溺れていく。
それを断ち切ったのは、襖を叩く音だった。
身体を起こしてそちらを見ると、障子に角が生えたシルエットが写る。
「あ、シオ」
残りの一文字は、信じられない程の轟音に呑み込まれた。
「――ッ!?」
障子を破壊せんとばかりに叩いたシルエットは、再び拳を振り上げる。
壊れないのが不思議なほどの音が、再度響き渡った。
「何、なんだよ……」
部屋の隅まで後退りした翔大の脳内で、シオンが最後に言った言葉が再生される。
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