第二話 苛立つ鬼と白い死神

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『部屋からは出るなよ。もし外で何かに襲われても、オレは責任取らねェからな』  あぁ、こういうことだったのか、と翔大の中の冷静な部分が、存外早く解った答えを咀嚼した。 障子を叩く音はその間も止まない。 ラップ音など目ではない程にその音は恐怖を煽った。 「何、なんだよ……ッ」  先の科白を繰り返し、ぎゅうっと己の肩を抱く。 障子が何度も悲鳴を上げ、形を歪めていく。 「…………は」  じわり、視界が朧気に揺れた。 情けないなどという思考は、とうの昔に恐怖によって頭から追い出されていた。 「オイ、さっきからうるせェぞ。喚くんじゃねェ」  低くガラの悪い声が、翔大には仏の声にすら聞こえた。 同時に障子の向こうで動いた影が、片方倒れ伏す。 少し落ち着いた翔大は、恐る恐る障子に手をかけた。 「開けんじゃねェ!!」  焦った様子のシオンの声が耳に届いたと同時に、障子の隙間から鋭い爪がねじ込まれる。 「…………ッあ」  その切っ先が翔大を襲う寸前、何かが間に滑り込んだ。 刹那、思いっ切り目を閉じた翔大の頬に、液体が飛んできた。
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