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「え、血……?」
ぬる、と不快な感触で頬を滑るそれは死者である彼には流れていない物。
そして指先に付いた赤に疑問を抱く程、翔大は鈍くはなかった。
「ッシオン!!」
が、その予想は良くも悪くも、裏切られることとなる。
「あ゛? 何だよ」
勢い良く上げた視線の先には、血にまみれたシオンの姿があった。
そしてその赤は、彼の物ではなかった。
それはきっと、彼の足元に転がる子鬼のような生き物の物だったのだろう。
シオンの身長の半分程もない小さな身体は袈裟懸けに切り裂かれ、角の生えた頭はシオンに踏みつけられている。
シオンは着ていた着流しを摘み、顔をしかめた。
「チッ、コレもう駄目だな。……ンだよ、しぶてェなコイツ」
ぴくり、足の下で身じろいだ子鬼の頭蓋骨を、シオンは無造作に踏み潰した。
何とも形容し難い音に、翔大は口を両手で覆い俯く。
流石に何も出ては来なかったが。
「じゃーな。後、さっきは言い忘れたが、何が来ても障子は開けるな。オレ等は自分で開けられっから」
ひらひらと手を振り、去ろうとするシオンの足は、二歩目で止まった。
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