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(ここは、どこなんだ……?)
青年――有馬翔大(アリマショウタ)は混乱していた。
彼の目の前では、“あの日々”と同じような光景が繰り広げられている。
数人の生徒が一人の生徒を囲み、窓の近くでたむろしていた。
その一人は涙を堪えながら、周りの言いなりになっている。
「ほら、そこに足かけんだって! とっろいなぁ、テメェはよぉ!」
「マジ、一回生まれ変わった方がいいんじゃねーの?」
ぎゃはははは、と周りの野次馬から下品で無責任な笑い声が上がる。
ふと視線をずらすと、そこでは担任らしき教師がこの光景を翔大と同じように……いや、翔大とは正反対に半笑いのような表情を浮かべて見ていた。
『やめろよ』
その一言が言えたらどんなにいいか。
その一言に彼はどれほど焦がれているか。
それが翔大には痛い程わかっていた。
何故なら、彼も…………
(あれ?)
と、そこで思考に疑問が割り込んだ。
そう、彼はついさっき――
(僕、飛び降りたんじゃ……?)
4階建ての校舎の屋上から飛び降り、死んだ筈だ。
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