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(何で、生きて……? っここどこなんだ!?)
未だこの場にいる全員は、目の前の光景に夢中らしく、翔大の存在に気づいていない。
一人だけ違う制服の彼は、ぐらぐらと揺れる頭から必死に知恵を振り絞ろうとする。
と、そこに、
「見ーちゃった」
涼やかな声がいやにはっきりと響き渡った。
急激に空気の温度が下がっていき、音が遠ざかる。
カツン、カツンとそこに一定のリズムを奏でながら、彼らは姿を現した。
一人は雪よりも白くきめ細やかな肌に、ルビーよりも紅い宝玉のような瞳をした、黒髪の少女。
もう一人は日に焼けた健康的な褐色の肌、サファイアをはめ込んだような瞳に、紫がかった黒の短髪を逆立てた男性。
二人とも黒い袴に衣、ブーツを着ており、少女は右目を、男性は左目を、それぞれ眼帯で覆っている。
「いーけないんだー、いけないんだー♪」
子供が歌うようなそれを口ずさむ彼女は、指先でくるくると何かを弄んでいて。
その場にいる人々の視線はそこに集まっている。
「閻魔様ーに言ってやろー♪」
ガシャ、と音を立てて回転を止めたそれを、彼女は構える。
黒く光る、拳銃を。
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