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更にそこにイオリも寄ってきて、翔大に手を伸ばし、ペタペタと触りだした。
「あ、の……?」
頬をムニムニと摘まれつつ、翔大はやっとのことで声を絞り出す。
「おっかしーなー?」
が、イオリの声が、それをかき消した上に、
「キミ、死んだんじゃなかったっけー?」
思考をも停止させた。
「まァいい。取り敢えず、連れて帰んぞ」
「そだねー。もし、本当にそうだったら、調べなきゃだもんねぇ」
翔大の凍りついた脳みそが動き始めて、この会話を理解する頃には、両足は地面から離れていた。
「うぇあっ!?」
翔大の口から、おかしな悲鳴がもれたのも仕方の無いことだった。
気が付いた時には、彼は腰の辺りに手を回され、抱え上げられていた――イオリに。
「ちょっ! えぇええ!?」
翔大はそこそこ背が高いので、体重もそれなりにある。
大の大人でも片腕で抱えるのは相当辛いはず、なのだが。
「シオン~、どっちにするぅ? 向こうに連れてった方がいいかなー?」
「いや、こっちでいいだろ。一応オレらで確認してからの方がいい」
「そだねー」
かなり小柄と言えるイオリの腕の中は驚く程に安定していた。
抱え上げられている翔大は、抵抗するのをすっかり忘れて呆然としている。
その間にイオリはスタスタと窓に近づくと、窓枠に手をかけた。
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