第一話 黒い猫と黒い鬼

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 更にそこにイオリも寄ってきて、翔大に手を伸ばし、ペタペタと触りだした。 「あ、の……?」  頬をムニムニと摘まれつつ、翔大はやっとのことで声を絞り出す。 「おっかしーなー?」  が、イオリの声が、それをかき消した上に、 「キミ、死んだんじゃなかったっけー?」  思考をも停止させた。 「まァいい。取り敢えず、連れて帰んぞ」 「そだねー。もし、本当にそうだったら、調べなきゃだもんねぇ」  翔大の凍りついた脳みそが動き始めて、この会話を理解する頃には、両足は地面から離れていた。 「うぇあっ!?」  翔大の口から、おかしな悲鳴がもれたのも仕方の無いことだった。 気が付いた時には、彼は腰の辺りに手を回され、抱え上げられていた――イオリに。 「ちょっ! えぇええ!?」  翔大はそこそこ背が高いので、体重もそれなりにある。 大の大人でも片腕で抱えるのは相当辛いはず、なのだが。 「シオン~、どっちにするぅ? 向こうに連れてった方がいいかなー?」 「いや、こっちでいいだろ。一応オレらで確認してからの方がいい」 「そだねー」  かなり小柄と言えるイオリの腕の中は驚く程に安定していた。 抱え上げられている翔大は、抵抗するのをすっかり忘れて呆然としている。 その間にイオリはスタスタと窓に近づくと、窓枠に手をかけた。
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