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伊良家の人々は、分譲マンションで二十年も生活していた。
その伊良家の長男、真樹緒は、学校では苛めの被害者だった。
今日も帰宅するなり自分の部屋に引きこもって、体育座りで憂鬱になっていた。
(はあ、今の学校から転校したいくらいイヤになったよ……)
その思考だけが脳内リピートして、うつ伏せした。
そんな矢先のこと、突如として穴の開いてもいない天井から、奇妙な物体が一つ降ってきた。
「ワッ!!何なんだ。一体全体……何がどうしたんだァ」
床に着いたソレは、キメラみたいな存在だった。
猫の身体に犬の頭の合成生物だと判った。合成化だから見た目はグロかった。
妙生物の顔は、真樹緒の目に向けられた。
「やあ、こんにちは。突然だけどキミの身体を借りるネ」
ソイツは人語を話すと、犬の眸【め】が非常灯の明るさと等しく輝きだした。
「ボクはキケヤン。いきなりだけど、複製術で三人のキミを創造するので、よろしく」
複製体を作る過程。それは、妙生物の眸の赤い光を被験者に見せることだった。更に真っ赤になったそれは、真樹緒を包み込むような膜になり、少年の全身が赤く染まっていった。
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